medisere メディセレ 川井 児島

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京都府学校薬剤師会 会長 守谷 まさ子 氏
対談目次   ● 6年制国家試験はどう変わるのか

薬学教育はどのように変わろうとしているのか
 

児島 : こんにちは。今日はよろしくお願いいたします。

栄田 : こんにちは。こちらこそ、よろしくお願いします。

児島 : 平成18年度から薬学6年制教育がスタートしました。まず、薬学が6年制教育へ移行した背景には、どのようなことがあったのでしょうか。

栄田 : 薬学教育の6年制への移行については、実は、20年以上も前から論議がありました。各種の職能団体や、一部の行政の方々から、6年制への移行の必要性が指摘されておりました。一方で、4年制教育でも質の高い薬剤師の養成は可能、との考えもあり、長い間の議論がありました。6年制への移行が現実味を帯びるようになったきっかけは、平成4年の医療法改正ではなかったか、と思います。すなわち、薬剤師が「医療の担い手」の一員として明確に位置付けられ、これが、今回の6年制への移行につながっている、と理解しております。

児島 : 6年制学部の教育内容については、既に日本薬学会が「薬学教育モデル・コアカリキュラム」というモデル案を作成していますが、これまでのカリキュラムと最も異なるのはどこでしょうか。

栄田 : 病院と薬局における長期実務実習が必須化されたこと、だと思います。これまででは、おおよそ2〜4週間の実習であり、その内容についても特に明確な基準はなく、心構え次第では見学と大同小異である、というのが実情でした。一方、6年制カリキュラムでは、病院で2.5ヶ月間、薬局で2.5ヶ月間、合計5ヶ月間が実習に充てられることになります。医療現場で十分な期間の実習を行い、薬剤師に必要な資質を身につけることが求められています。この長期実務実習は、医療現場で働く薬剤師を目指す学生にはもちろんのこと、例えば、製薬企業で医薬品の研究、開発に従事することを目指す学生にとっても、必要不可欠だと理解されています。

児島 : たしかにそうですね。私は薬剤師国家試験対策を中心に活動していますが、4年制薬学教育では、薬剤師国家試験の合格が最大の目標とされてしまいがちでした。確かに、4年間積み上げてきた学習の集大成が、国家試験合格といっても過言ではなかったかと思います。しかし、残念ながら、医療現場からは、知識だけを蓄えた人材しか育っていない、という指摘も聞きます。今後は、このような指摘が減りそうですね。

栄田 : そう期待しています。「医療の担い手」の一員を涵養(カンヨウ:少しずつ養い育てること)できる教育システムであらねばならない、と思います。例えば、個々の患者さんが置かれている環境によっても、時として、選択する治療法が大きく異なります。そのようなことを理解してほしい、と思っています。入院に至る経過、患者背景、既往歴および薬歴、客観的所見、患者さんの訴え、諸検査の結果および処方内容、退院に至るまでの経過などから、薬学的管理の課題と問題点を発見し、解決する能力と、患者さん、その家族の方々、その他の医療従事者の方々とコミュニケートする能力を涵養することが大事と思います。ところで、この新しいシステムには多くの課題が山積しています。例えば、医療現場を経験している教員が少ない、実務実習場所がない、などです。ほとんどの大学で附属病院や附属薬局がなく、病院や薬局の協力なくしては成立しないのです。

児島 : 実地に即した教育がなされるということは、6年制対象の国家試験でも「実地に即する」というのがキーワードになってくるのでしょうか。近年の国家試験ではすでに、症例を中心とした問題が数題出題されていますが、今後はさらにこの傾向が強くなっていくと考えられますね。

栄田 : 当然のことながら、新しい国家試験は、6年制カリキュラムへ整合していなければなりません。医療人として必要な知識・技能・態度の修得が目的ですから、症例を中心とした問題だけではなく、例えば、診断能力を確認する問題や状況判断能力(重要度、優先度)を確認する問題の出題も検討されているようです。医師等の国家試験を参考にされているようです。本年の夏ごろ、おおよその方針が決定されるように聞いています。

児島 : なるほど、そうですか。現在の国家試験では、診断能力まで問われることはありません。おそらく、診断を行うのは医師のみである、というスタンスからでしょう。しかし、今後セルフメディケーションが進めば、薬剤師がプライマリーケアを担う可能性もあります。現在、本邦では、薬剤師に処方権はありませんが、プライマリーケアの一端を担うとなれば、ある程度の診断能力は必要ですね。他にも現在の国家試験と大きく異なる点はありますか。

栄田 : 今までに全く無かったものとして、態度を確認する出題も検討されているように伺っています。例えば、自殺をほのめかす患者に対し、どのような応答が適切か、ということを問います。

児島 : これは大きな違いですね!医師国家試験では、コミュニケーションをテーマにした問題を見かけますが、薬剤師国家試験においても出題される可能性があるのですね。これまでの国家試験と比較すると、基礎と医療の割合が大きく医療側へシフトしそうですね。

栄田 : そう思いますが、一方で、医療側への偏りを懸念する声もあがっています。ところで、6年制カリキュラムでは、実務実習を行う前に、CBTとOSCEという2種類の共用試験を行います。国家試験の内容は共用試験の内容次第という部分も少なからずあるように感じています。共用試験でも基礎的知識の有無を確認し、国家試験でも同様の確認を行うのなら、両者の差別化が課題になるかも知れません。


児島 :
なるほど、6年制の国試の内容が決まるまでには、まだしばらくの時間がかかりそうですね。では、題数についてはどうなるのでしょう。現行の国試は、240問ですが、やはり題数は増加するのですよね。

栄田 : おそらくそうなるでしょうね。330題という話も伺っています。現在のところ、基礎薬学が60問→75問(これまで→新しい国家試験)、医療薬学が120問→180問、衛生薬学が40問→50問、法規が20→25問という話みたいですが、これらについても、本年の夏ごろ、おおよその方針が決定されるように聞いています。

児島 : たしかに、この案ですと医療の占める割合はあまり大きくなったとは言えませんね。臨床を重視するならもう少し医療が多くても良いのではないか、と思います。「臨床を重視する」で思い出しましたが、先生とお会いするきっかけは、「医療現場と国家試験の違い」でしたね。私が先生の講義後に、「国家試験にはこのように出ているのですが…」と質問に行ったのでした。

栄田 : そうですね。児島さんが質問に来てくれたのを覚えています。これまでの国家試験の「正解」は医療現場では必ずしも「正解」でない、医療現場にいないはずの児島さんがこのことを理解しておられたこと、びっくりした記憶が残っています。

児島 : 国試予備校の講師をやっていて、現場と国家試験の内容がちがっていると学生もとまどいますし、ときには我々も困ってしまうことがあります。しかし、このような違いに触れるのも一つのチャンスだとも考えています。ですから、「現場と机上の違いも学生さんに知ってもらいたい」と積極的に講義でも取り上げています。

栄田 : 現場と机上の違いに気づくためには、現場を知らないといけませんね。

児島 : はい、本当にそう思います。これからは予備校講師も現場を知らなければいけません。メディセレの講師陣には、全員病院や薬局で実務を経験させています。

栄田 : それはすばらしいですね。新しい国家試験では、医療現場での「正解」を試すことになるはずです。予備校でそのような試みをされているというのは驚きです。メディセレは新しい国家試験にも速やかに対応できそうですね。医療現場での「正解」、まず大学教員が理解しなければならないのに、と反省します。このような「現場と机上の違い」を無くすよう努力しなければなりませんね。2年後にはOSCEも始動します。6年制成否の鍵を握る重要な要素だけに、体制をしっかり確立し、適切な形で実施しなければなりませんね。これは我々の義務だと思っています。

児島 : 大きな変化を迎えましたが、この変化によって大きく薬剤師が飛躍でき、今よりももっと社会に貢献できるようになるといいですね。

栄田 : 私もそう思います。お互いがんばらなければいけませんね。

児島 : 製薬企業、病院、教育機関そのすべてを経験された栄田先生だからこそのお話を聞くことができました。

栄田 : また様々な意見交換ができると良いですね。

児島 : はい。私もそう思います。貴重なお時間をいただきまして本当にありがとうございました。

 
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